マーケットデザインは、経済学で工学的なアプローチをとります。


 工学的なアプローチとは、理論だけを考えて研究の世界で終わりにするのではなく、実験やシミュレーションも併せて活用し、実際に現実への応用を考える点に特徴を持ちます。


 マーケットデザインが対象とする市場は、欲する人と提供したい人が出会う場で、非常に広く、価格のない世界も対象とします。お金で解決できない大学入試制度、臓器移植も含みます。ミクロ経済理論は非常に理論的で、一見すると机上の空論に思えます。しかし、私は制度設計の際の技術ではないかと思います。実際の市場をよく観察すると、うまく機能しているものもあるし、そうでないものもある。機能している市場、機能不全に陥っている市場には、共通のものが多い。市場を設計する際には、いろんな可能性がある中で、現実的な制約を考慮してどのような制度が公平で、効率的でインセンティブの面から良いのかを考えます。

 これがより良い制度を設計する技術につながるのかなと思います。

慶應義塾大学マーケットデザインセンター長

慶應義塾大学経済学部教授

栗野 盛光